年々、少子高齢化が進んでいる日本ですが、このたび政府は、従業員が70歳まで働けるように、企業に対して努力義務を求めた「高年齢者雇用安定法」などの改正案を閣議決定しました。
これだけを見ると難しいことに見えてしますので、わかりやすく解説していきたいと思います。
そもそも高年齢者雇用安定法とは
まず、この「高年齢者雇用安定法」について、あまり聞き慣れない言葉なので、ここから解説していきたいと思います。

https://r.nikkei.com/article/DGXKZO44829090V10C19A5EA2000
高年齢者雇用安定法
正式名称は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」と言います。
急速に進んでいる高齢化の現状に対応するために、高年齢者が少なくとも年金受給の開始年齢まで働ける環境を整備しようということを目的として作られた法律になります。
定年退職後に、引き続き働きたいと希望を出しても、断られる可能性があり、そうなると年金もまだもらえないうちに、無収入になってしまうおそれがありました。
平成25年4月に厚生年金の支給開始年齢が引き上げられたことにより、一部を改正し、施工されました。
これにより年金受給開始年齢である65歳まで働きたい希望者は65歳まで働けるように、企業に義務づけたもので、定年を65歳まで引き上げることを義務づけたものではありません。
つまり、今回はこの年齢が65歳から70歳まで引き上げられるという改正案が閣議決定されたということです。
これが通常国会で成立すれば、令和3年4月から施工されることになります。
企業義務の変化




https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/274520
企業の義務の変化は以下の通りです。
(改正前)
- 定年廃止
- 定年延長
- 再雇用制度の導入
これから3つのうちから選ぶようにとされていました。
(改正後)
- 定年廃止
- 定年延長
- 再雇用制度の導入
- フリーランス契約への資金提供
- 起業支援
- 社会貢献活動参加への資金提供
など、選択肢が増えることになりました。
これは高年齢になるほど、健康状態などにいろいろな差があるため、少しでも企業への負担を減らすために考えられています。
自分の会社やグループ企業で働き続けるだけではなく、他の会社に転職をさせることも認められ、この場合、転職先である企業と企業間契約を結ぶ必要があります。
また起業や社会貢献への支援は、雇用関係がなくなるため、労働組合の同意が必要になります。
副業などを進めるために、労災保険法も改正され、掛け持ちをしている人が労災認定を求めたとき、全ての労働時間を合わせて、判断するように改正されました。
改正されることでの影響




https://www.nikkei.com/article/DGKKZO31863770W8A610C1EA2000/
高年齢者雇用安定法が改正されるとどのような影響があるのでしょうか。
〇働きやすい環境が整いやすくなる
まだまだ高年齢者の求人は少なく、働くには厳しい状況が続いていますが、改正されることにより、企業の体制も変わってくるので、今までよりは働きやすい環境に近付いていくと予想されます。
〇年金受給年齢も変わるかもしれない
今回65歳から70歳に引き上げられれば、65歳以上の方でも働いている人が増えると考えられます。
そうなると年金受給開始年齢も引き上げられる可能性が出てきます。
政府はこの改正に合わせての引き上げは行わないとしていますが、今後はわかりません。
また今まで定年の年齢と、公的年金受給開始
年齢を一致させてきたので、このことからも受給年齢が70歳になる可能性は十分あります。
〇年金額の増加
70歳まで働くことになれば、保険料の支払いが発生します。
そのときは支給されるお給料の手取りは少なくなってしまいますが、支払う保険料が増えるため、受給する際の年金額は増加することになります。
〇昇給しにくくなる
70歳まで雇用するということは、働く人が増えることになります。
そうなると企業にとっては人件費の増加に繋がります。
そのため、全ての人の昇給がしにくくなると考えられます。
また早期退職の希望者を募ることも増えるかもしれませんね。
ネットでの反応
今回の閣議決定を受け、ネットの反応をまとめてみました。
- 正直迷惑
- 若手や中堅のやる気がなくなる
- 何歳まで働かせるつもりだ
- 年金不足を高齢者にも負わせたな
など、批判の声が多く上がっています。
また疑問の声も上がっており、70歳まで働ける環境は本当に幸せなのか?という声もあります。
やはり実際現場で働く人にとって、自分への影響を少なからず考えてしまいます。
出世を目指す人、昇給を狙っている人など、たくさんいてる中での今回の改正は、どのような影響が出るのか、不安になるのも当然ですよね。
まとめ
改正することによって、やはりいいことばかりではなく、いろいろなマイナス面が生じてしまうのは、仕方のないことかもしれませんね。
人それぞれ生活スタイルや考え方も様々なので、一概にはいえませんが、働く幅が広がることすごくいいことのように思えます。
これからの日本はますます少子高齢化が進むとされ、雇用の問題だけではなく、さまざまな問題が起きると予想されています。
少しずつでもひとりひとりが住みやすい環境へと変化していくと嬉しいですね。
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